屋久島

旅の支度

はじまり

仕事の帰り道、ふと、縄文杉に逢いに行こうと思った。

はじめに、僕はトレッキングの経験がない。縄文杉に逢いに行こうと思い立ったが、その術を知らない。先達の知恵を借りようとインターネットを覗くが、縄文杉までの道のりは険しく「あれも、これも必要」といった内容が事細かく羅列してあり、とても今から全て用意するのは難しいと思った。考えても仕方がないと、その日のうちにトレッキング専門店へ足を運んだ。店長曰く「ちゃんとした靴と雨具があれば何とかなる」とのこと。いそいそと銀行から5万円を下ろして来たのだ。

靴はローカットからハイカットまで様々なバリエーションが揃っており、その中でもヌバックレザーやメッシュやらソールのブランドに渡るまで様々な商品が忽然と並べられている。「山を歩くなら、ハイカットがおすすめですよ。ローカットは歩きやすいんですけど、足を挫いてしまうことがあるので」と店長は悠長に語る。

試着しようとすると「これ履いてください」と毛玉だらけの靴下を渡される。トレッキングシューズは底が硬いためクッション性のある靴下を履くらしい。言われるがまま靴下を履き試着してみる。店内をウロウロと歩き回りフィット感を確かめる。「トレッキングシューズは普段より1cm程度大きい物を選ぶんですよ、下りの時につま先が当たって痛いので」なるほど、あとは踵が浮かないように紐でしっかりと足をホールドしてやるという事らしい。

あとは雨具、ポンチョタイプの安いものを買おうとすると「雨具は上下別のセパレートタイプが良いですよ」と優しく制される。店長はトレッキングについて無知な僕の、縄文杉に逢いに行くという夢を成功されるためにとても協力的だった。しかし良質な雨具は値段も恐ろしく、財布をちらと一瞥し、ちょっと考えますと靴のみ購入して帰路に着いた。

またもや先達の知恵を借りようとインターネットを覗くと、雨具は必要不可欠であり、屋久島のトレッキングでは尚更と、もうセパレートタイプの紹介しかしていない。店長曰く、ポンチョタイプは風に煽られたり、蒸れたり、足元が見え辛いため怪我のリスクも伴うとのことだった。店長ごめんなさい、セパレートタイプ買います、と心の中で呟き、移動の都合上別の店舗でそこそこのものを購入した。

青森から東京、鹿児島へ、そこから屋久島への移動手段を考える。僕に与えられた休暇は5日間であり、旅の目的は縄文杉に逢うことだけなため、他の観光名所巡りなどはバッサリと諦めもついた。時間も限られているため、夜行バスやフェリー等の時間がかかる移動手段は念頭に無く、青森-東京間は新幹線、東京-鹿児島-屋久島間は飛行機で移動することに決めていた。

チケットは準備できた。あとは細々したものをリュックに詰めて出発するだけである。未来を想像して、期待と不安が入り混じり、前日はよく眠れなかったのを覚えている。

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