屋久島

民宿に微笑みを 鹿児島編

未定の旅

8時55分発の東京発-鹿児島着の飛行機に乗らねばならなかったため、朝が早かった。今回の休みの予定として、

1日目:青森-東京

2日目:東京-鹿児島

3日目:鹿児島-屋久島、登山

4日目:下山、屋久島-鹿児島

5日目:鹿児島-東京-青森

という何ともざっくりした予定を立てたが、昼頃からトレッキングって可能なのか、と不安になり調べてみると、そういった内容の記事が出てこない。”屋久島は片道4時間の~云々”といった内容が主で、”前日に飲み過ぎ遅れて出発したがリタイアしてしまった”という残念過ぎるブログと、”登山は朝に出発して15時には登頂してるのが普通”という何とも無慈悲な記事しかヒットしない。

しかし、11時にスタートし、多く見積もって片道5時間かかったとしても、登頂は16時なため日は暮れていないはず。よし、この予定で行こうと、いそいそとチケットを予約する。そして今日泊まる宿を、搭乗待ちの時間に探すが、何処も彼処も予約で埋まっている。宿がなければテントで野宿でもいいか、というスタンスで出てきたが、関東の夏を舐めていた。ただ立っているだけで首筋に汗が流れるこの気持ち悪さ、風呂に入りたい。空港からは少し離れるが、何とか安い素泊まりの民宿を予約する事が出来た。

鹿児島

東京-鹿児島の飛行機に搭乗する。4年ぶりの飛行機にドキドキしながら離陸を待つ。助走が長い、早く飛べとイライラしていると、ギュイーンというけたたましい轟音が不安を後押しし、猛スピードで滑走路を駆けているのが、シートに身体を押し付けてくる重力から伝わった。フワッと身体が浮く気持ちの悪い感覚に、離陸の合図を感じ、これから2時間弱も耐えられるだろうかとゲンナリした。しかし、1時間もすると慣れるもので、CAさん綺麗だなと目で追ってみたり、窓の外を眺めることもできるようになり、他の乗客よりも1時間遅れて飛行機が飛び立っていることに感動を覚えたりした。

様々な不安は杞憂におわり無事鹿児島に到着した。空港から宿までは車で15分らしいが、鹿児島を色々見て回りたいという思いもあったため、レンタカーを手配することにした。一通り規約の説明を受け、ガソリンを満タンにして返すようスタッフに念を押され、エンジンをかけて走り出した。

民宿にて

15分ほど走ると民宿の名前が記された看板が見えた。看板を横目に駐車場を探すと60代と思しき男性が声を掛けてきた。「どちら様?ここに泊まる方?」その節を伝えると、あの白い車に付いて行ってと言われる。これまた年配の女性が白い乗用車に乗り、僕の視線を待っていた。言われるがまま付いていくと、平屋の同じ形をした小さい建物が6軒ほど雑然と並んでいる。そのうちの手前の家を案内される。「ここ使ってください、洗面用具は今お持ちします、お風呂は部屋に付いてます」と一通り部屋の中を案内される。「暑いですね、窓開けますね」と無愛想に聞こえた横顔に優しい微笑が見えて、この民宿に抱いていた違和感はすっと消えた。

この民宿は部屋に温泉が流れている。とは言っても四畳半ほどの広さに浴槽が備わっており、洗面器と椅子しか置かれていない。昔、湯治宿として経営されていたらしいことを後から知った。温泉は鉄分や炭酸分を多く含んでいるため何とも鉄臭い。シャワーの設備もない為、浴槽から風呂桶でお湯を汲み身体を洗う。身体中にへばり付いた気持ちの悪いベタつきを洗い流すと気分が晴れた。

散策

風呂から上がり、身支度を整える。玄関のドアを開けると、蝉が一段と鳴き喚き、茹だる暑さを底上げした。車のエンジンをかけ鹿児島の街を当てもなく走る。ふと”神社にいこう”と思った。調べると、この近辺では霧島神宮という神社が有名らしい。車を20分程度走らせると、霧島神宮と書かれた標識と、右手に大きく拓けた駐車場が見えた。日陰を探し車を駐車する。辺りを見回すと、車に乗っているときには分からなかったが、大きな石碑があるのに気付いた。行先を見つけた嬉しさに足取りが軽くなる。石碑の先には長い石段が続いており、その先に鳥居が小さく見えた。石段を登り切ると、先ほど小さく見えた鳥居は思いの外大きく、立派に神宮を構えていたことを知る。それをくぐり、しばらく砂利道を歩くと赤を基調にした、煌びやかな装飾を施した建物が見えた。境内をぐるっと見回すと、真っ直ぐに伸びる御神木がどしっと居座っていた。

自分のための優しい時間を過ごし、宿へ戻って来た。特にすることもなくテレビを垂れ流していると、あっという間に日は傾き始めた。明日、いよいよ念願の縄文杉へ会いに行ける、そう思うとじっとしていられず荷物の整理を始めるが、身体を休ませなければと早々に布団に潜ったりした。

頭は冷えて冴えており、なかなか寝付けない。明日、人生の何かが変わるかもしれない、そんな期待に胸が鳴った。眼を開けても閉じても変わらない暗闇に恐怖は感じない。この旅館の、この建物の、この一室は、確かに今の僕の全てであり世界だった。

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